ユーザーインタビュー

対象機種:オートメモ

訪問診療の診察所見を移動中に録音してテキスト化。
電子カルテ作成など事務処理の時短と内容の充実が実現

内科医として、兵庫県で訪問診療を主体とするクリニックを営む中野紘平さん。超高齢化社会に欠かせない地域包括ケアシステムの担い手として、またコロナ禍における病床確保という側面でも、患者さま宅に定期訪問して診療を行なう在宅医療の重要性は日々高まっています。しかし、患者さま宅ではカルテ入力などができず、帰院後に事務処理に追われるという課題を抱えていたと中野さんは言います。多忙を極める訪問診療の現場で、中野さんはどのように「オートメモ」の活用されているのか、リモートインタビューでお話をうかがいました。

電子カルテや介護関係のレターなど書類作成が増える訪問診療

──訪問診療では、何名くらいの患者さま宅にどのくらいの頻度で訪問されるのでしょう?

中野さん:クリニックによってさまざまな運営方法があるのですが、当院では外来と訪問の割合は1対2程度で訪問診療の比重が大きくなっていまして、週に4日ほどは訪問診療にあてております。主に午後1時~午後5時にかけて、1日あたり9〜10人ほどの患者さま宅に伺って診療しています。

──オートメモはどのように活用いただいているのでしょうか?

中野さん:用途としては2つあり、1つめは電子カルテの作成です。外来診療ならその場で入力できますが、訪問診療だと患者さまの自宅に伺うので診察時にカルテをつくることができないんです。オートメモを導入するまでは、すべての訪問診療を終えクリニックに戻ってから、メモしておいた内容と記憶を頼りに電子カルテを入力していました。これを、ひとまず次の患者さま宅に向かう前に、車の中でオートメモに診察所見を録音しておくことで、クリニックに戻ってからの作業はテキスト化されたメールを元に作成できるようになったので、事務作業がずいぶん楽になりました。
もう1つは、地域包括ケアとして連携している方々への診療情報提供書の作成です。在宅医療では、訪問看護ステーションや調剤薬局、ケアマネジャーさまなど、さまざまな方と連携を取る必要があります。訪問看護でもドクターの指示がないと処置できないケースがありますし、介護保険でもドクターの指示がなければ使えないこともあります。ですから、カルテに加えて患者さまごとに情報提供のための手紙を作成し、その都度郵便やFAXなどでお送りしているんです。

──それを毎回10人分作成するとなると、事務処理時間が長くなりそうですね。

中野さん:クリニックに戻ってから60~90分くらいかかっていました。オートメモを導入してからは、30~60分に短縮できた実感があります。

──車の中だと、周囲の雑音もあると思いますが文字起こしはうまくできていますか?

中野さん:特に今まで問題は出てないですね。オートメモとWi-Fiの接続もスマートフォンのテザリングを使っていますので、車の中でアップロードしてしまって、クリニックに戻るころにはすべての患者さまの文字起こしされたテキストがメールで届いています。

──医療現場で使うにあたり、オートメモのデザインはいかがでしょうか?

実際に訪問診療に使用されているバッグ。オートメモのデザインは医療現場にも馴染む(画像提供:中野さん)

根本さん:白くてシンプルで、清潔感があっていいですね。コロナ禍にある今は特に、清潔面であることには気をつかいます。私もお宅に持参するクリップボードは出すたびに必ず拭きますし、見た目の清潔感を考慮して診療バッグも中身が見えるクリアタイプを使っています。そういう意味でオートメモのデザインは、医療の現場にもぴったりだと思います。

時間短縮だけでなく連携する方々との情報共有も充実

──具体的にはどんなことを録音されるのですか?

実際に車中で録音された内容(一部固有名詞は編集)。テキスト化されたものを電子カルテにコピー&ペーストすることで、
クリニックに戻ってからの事務処理が大幅に短縮(画像提供:中野さん)

中野さん:電子カルテには体温、脈拍、血圧などの基本的なバイタルサイン、診察や検査の所見、薬の変更など処方箋に関するものなどさまざまな内容を記載しますが、録音するのは診察の所見や処方箋についてですね。バイタルサインは診療中にメモを取っています。録音時間は、1人あたり20秒ほどですね。あとは、診療情報提供書が必要な場合はその原案も録音しています。こちらも1人1分程度で行なうことができます。診療後すぐにこうやって録音しておけば、クリニックに戻って思い出しながら入力するよりもずっとスムーズですね。

──医療関係ですと専門用語も出てきそうですが、文字化できていますか?

中野さん:薬の名前や病名も、「なぜこんな言葉まで!?」とびっくりするぐらい正しく変換されている印象です。私の関西弁のイントネーションも問題なく拾ってくれています。一方で、バイタルサインなどの数値や単位は、なかなか正しく変換されないのでメモを見ながら入力していますが、これもAIが学習してうまく対応してくれるようになったら助かりますね。

──特に「オートメモがあって良かった」と実感されたのはどんな場面でしょうか?

中野さん:診療情報提供書の作成ですね。診察・検査の所見、薬の変更の連絡のほか、例えば「介護ベッドが必要」とか「自宅用の介護トイレを用意してください」などのアドバイスも書き込むのですが、以前は入力に時間がかかってしまうので必要最低限のシンプルな内容にとどまってしまっていたんです。でも、オートメモがあれば録音しておけばコピー&ペーストできるので、手紙に盛り込む情報量が増やせるようになりました。今は訪問介護ステーションが全国にたくさんありますし、介護や医療に携わる方は日々の記録づくりが大変だと思いますが、そんな場面では特に役に立つと思います。

在宅医療が増えるなか、医療関係者をサポートするツールとして有効

──訪問診療の比重が大きいとのことでしたが、コロナ禍の影響もあるのでしょうか?

中野さん:ありますね。今は入院してしまうと、患者さまとご家族の面会ができなくなってしまいます。最悪のケースでは、最期に立ち会えないことも問題になっていて、在宅での療養を希望される方が増えているんです。もちろん、超高齢化社会への対策として、医療費削減のため国としても在宅医療を進める動きもあります。いわゆる2025年問題ですね。2025年には高齢者数がピークになり、そこから15年ぐらいは減らないと言われていますので、今後も在宅医療のニーズは増え続けると思います。

──ほかにも医療現場で活用できそうなシーンはありますか?

中野さん:訪問診療では患者さまが病院から退院する際に、訪問診療医が病院に出向いてその後の方針を打ち合わせすることがあるんです。そこで話したことをすべて書き残しておくのは難しいのですが、そういった場面でもオートメモは活用できそうですね。
また、医事紛争になりそうなケースでは、会話内容を残しておくことも訴訟対策という意味で有効なのかもしれません。在宅ではほとんどありませんが、病院に勤務していたころの経験から、「この処置はするべきだったのか」「この手術は失敗だったのではないか」とご家族に問われるケースは起こり得ます。最終的に言った、言わないの問題になる場合もありますし、万が一を考えて会話を残しておくのは備えになると思います。